山岳小説の傑作「神々の山嶺」の全てを5分で読破

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こんにちは!登山家の松浦です。

今回は私がこれまでに読んだ山岳小説の中でも傑作と名高い「神々の山嶺」をあなたにシェアします。

登山に少しでも興味があるならば、誰もが一度は夢を見るエベレスト登頂。しかし、そのほとんどは実行に移すことができず夢半ばで諦めるか、夢のままで終わります。もちろん私もです。

そんな中、周りの人間からなんと言われようと、資金が底を突こうと、たった一人になろうとその夢を追い続けたある天才登山家の物語です。

幼い頃、誰もがそれぞれの夢を持ちました。しかし、成長に従い夢を忘れ、現実の中で生きることを余儀なくされます。あなたにも当てはまりませんか?

しかし、その男はどんな苦境に立たされようと、自分の人生をかけて夢を追い求めます。そんな生き様をぜひ体感してみてください。

それではどうぞ!

山岳小説の傑作「神々の山嶺」と出会った私

私と小説「神々の山嶺」との出会いは、原作者である夢枕獏を経由したものでした。と言っても別に原作者に直接お会いできたわけではありません。

約10年前、当時ビジネスマン向けに発行していた月刊誌「KING」で、夢枕獏氏は自身の旅行記の連載を持っていました。わずか2〜3ページの短い連載ページでしたが、その文章は知性に溢れ、ユーモアセンスに富み、人を惹きつけるに十分な魅力を持ったものでした。

わたし
なんでもいい!この人の著書を読んでみたい!

そんな強烈な願望を持ち、すぐにyahooで夢枕獏氏の著書を調べてみました。数々の小説タイトルがヒットしましたが、ジャンルに偏りはなく、オカルト、SF、時代物、格闘技と多岐に渡っていました。

そんな中で一際私の目を引いた小説が「神々の山嶺」だったのです。夢枕獏氏の代表作ともいうべき作品とあり、何よりも私自身が登山にのめり込み始めた頃だったということもありました。

数日後の仕事帰りに、大阪は梅田の大型書店「紀伊国屋」へと立ち寄り小説コーナーを物色するとすぐに発見、分厚い単行本の「神々の山嶺」が上下巻に別れて陳列されていたのです。

1ミリも迷いことなく、ただちに上下巻を手にしてレジへと走り、ウキウキ気分で帰路につきました。

その日はちょうど金曜日。再び出勤する日までの2日間、私は「神々の山嶺」の世界に没頭することとなったのでした。

山岳小説の傑作「神々の山嶺」そのあらすじ

あらすじをザックリと説明するならばこうなります。

超人的な精神力と天才的な登攀技術を持った登山家である羽生丈二が、前人未到のエベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑む姿を描いた小説

とは言っても、単純な「登山家出ある羽生丈二の最難関エベレストルートの登頂を描いた山岳小説・・・」ではありません。

他人との馴れ合いを極端に拒み、自分が卓越した登山技術の持ち主だと自覚しながら、単独行にこだわり続ける羽生丈二

複雑な事情を経て、羽生丈二に関わりを持ち続けようとする登山家兼カメラマンの深町

また、イギリスの登山家ジョージ・マロリーが1924年にエベレスト登頂を果たしたのか否かという現実に存在する登山界最大の謎も織り交ぜながら、物語はある種ミステリーの要素も含みます。

基本的には山岳小説でありながら、ミステリー小説の要素も含み、またオカルトとまではいかなくともそれに近い形で登山というものの厳しさ、過酷さが非常に精密に描かれています。

登山について熟知しているつもりだった私ですらこの小説を読んで、改めて登山というものの厳しさ、過酷さに身震いしたことを覚えています。

そんな「神々の山嶺」を読んだことのないあなたのために、ここで簡単にストーリーを紹介します。

ただ、もしあなたが「後で読むつもりだから、今ストーリーは知りたくない!」と言うのであれば、ここから先を読むことはオススメしません。

では、どうぞ!

物語の舞台はネパールの首都カトマンズ。カメラマン兼登山家の深町が、古道具屋である古いカメラを購入したところから始まります。

1993年、深町はエベレスト登山隊に参加したものの、2人の仲間を失った挙句登頂を果たせず、失意のままネパールの首都カトマンズを彷徨っていました。特に目的があったわけではありません。ただ、活気に溢れたカトマンズの町を歩いていると、励まされているような気になるのです。

そんな中、ふと立ち寄った古道具屋の古ぼけたカメラに釘付けになった深町。カメラには「BEST POCKET AUTOGRAPHIC KODAK SPECIAL」という文字が刻まれていました。

「このカメラはまさか・・・」

店主の了解を得てカメラを手に取り、深町のある疑念は確信に近いものへと変わりました。「おそらく間違いない。このカメラだ・・・」深町の背に不思議な戦慄が走り、その手は動揺のあまり小刻みに震えていました。

このカメラについては1924年まで遡ります。その年、イギリスのジョージ・マロリーという登山家がエベレスト登頂に挑戦しましたが、遭難しそのまま帰らぬ人となりました。

ジョージ・マロリーの足跡は、彼が落としたピッケルが発見された場所から推測することができ、そこからある疑問が浮かび上がりました。それが今日に至るまで、エベレスト登攀記録史上の最大の謎とされているのです。そのある疑問というのがこれです。

「ジョージ・マロリーの遭難はエベレスト登頂前か登頂後か」

人類史上初、エベレスト登頂を果たしたエドモンド・ヒラリーテンジン・ノルゲイ。その正式な記録は1953年とされています。

もし、ジョージ・マロリーのエベレスト登頂を決定づける証拠が発見されたとすれば、エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイよりも30年近く前に、ジョージ・マロリーによりエベレスト登頂がなされたことになります。

深町が手に取ったそのカメラは、ジョージ・マロリーがエベレストに持ち込んだカメラと全く
同機種です。今でこそ同機種のカメラが何万台も量産され、全国の家電量販店で販売されていますが、当時カメラは珍しく、しかもカトマンズにジョージ・マロリーが使っていたものと全くの同機種が数台あったとは到底考えられない。

従って、そのカメラはジョージ・マロリーが使っていたカメラそのものである可能性が極めて高く、そのカメラのフィルムを現像すれば、ジョージ・マロリーのエベレスト登頂の決定的証拠となり得るはずなのです。

深町はマロリーのカメラを150ドルという破格の値段で購入し、ホテルに持ち帰りました。無論、そのカメラのフィルムの行方を探るためです。

ところが、カメラは盗まれてしまいます。滞在中のホテルでの出来事でした。

エベレスト登攀記録史を根底から覆す可能性が極めて高いカメラ、深町は必死になってそのカメラの行方を追います。

ありとあらゆる情報網を駆使し、カメラの行方の手がかりを探しますが、外国人である深町の搜索は難航します。

それでも並々ならぬ意欲でカメラの手がかりへと食らいつき、ついにカメラの強力な手がかりにたどり着くのです。それがビガール・サン(ネパール語で毒蛇の意)との出会いでした。

深町は、もともとカメラはビガール・サンが持っていたものだということを突き止め、そしてそのビガール・サンこそが、かつての天才的登山家、羽生丈二であることを知るのです。

深町は、カメラの捜索を通して羽生丈二という人間を知り、やがて深町の興味はカメラから羽生丈二へと移ることになるのです。

なぜ、羽生丈二はビガール・サンを名乗り、ネパールにいるのか?
なぜ、羽生丈二はマロリーのカメラを持っていたのか?

幼い頃に両親を亡くした羽生丈二は中学生の頃、国内トップクラスの登山家が所属する清風山岳会に半ば無理やり入会、メキメキとその頭角を現します。

山岳会入会から数年後、国内トップクラスの実力を持つまでになった羽生丈二ですが、仲間意識のかけらもない独善的な性格、人を見下す態度で次第に孤立していきます。

そして、自分より実力が劣るはずの登山家がエベレスト登山隊に選出される、自分を先生と慕う後輩の転落死などを通して、羽生丈二はますます人を遠ざけるようになるのです。

深町は、カメラを捜索する中でそんな羽生丈二のストイックなまでの山へのこだわり、その登山スタイルに惹かれ、やがて羽生丈二がエベレスト登山ルートの中でも最難関である南西壁冬季無酸素単独登頂に挑戦しようとしていることを突き止めます。

羽生丈二の人生をかけた挑戦に何としても立ち会いたい!そんな思いから深町は、体力の続く限りカメラマンとして羽生丈二ついて行くことを申し出、そして許されます。

お互い何が起こっても助けない、という約束のもとで・・・

「神々の山嶺」を山岳小説の傑作にした魅力とは

実際に存在する登山史の謎を巧みに物語の中に取り入れている点、そしてエベレストのみならず国内の山も含めた登山の過酷さを表現する文章テクニックなど、魅力に溢れた素晴らしい小説、まさに傑作です。

中でも羽生丈二という人間の持つ不思議な魅力が、読む人を惹きつけて止まないのではないかと思うのです。

残念ながら、もし私の身近に羽生丈二のような人がいたら・・・会社の同じ部署に羽生丈二のような人がいたら・・・あまり嬉しくはありません 笑

しかし、より難関な登攀ルートを制覇することに喜びを感じ、ストイックなまでに自分を追い込むその姿は、自宅と会社の往復の毎日を送るだけの世のサラリーマンたちには深く共感する部分があるような気がします。

羽生丈二
これのためならば、たとえ死んでしまっても本望だっ!

そんな夢中になれるものに出会うことができた羽生丈二は、私生活が恵まれないものだったとしても、夢半ばで命を落としてしまったとしても、すごく幸せな人生を歩んでいるように思います

羽生丈二の生き様こそ「神々の山嶺」の最大の魅力!私はそう思うのです。

あなたはどのように感じましたか?

「神々の山嶺」の映画化

 

数年前に私も劇場へと足を運びましたが、実はこの「神々の山嶺」映画化されています。

かつて多くの小説が、映画として生まれ変わり、幾つもの素晴らしい作品が発表されました。中にはそうでもない作品もありましたが・・・

この「神々の山嶺」の映画化については、私は大成功だったように思います。

何よりもキャストが素晴らしかった!
羽生丈二役に阿部寛、深町役にV6の岡田准一などなど・・・

主役級の2人のキャスティングはまさに私の頭に描いた人物像にピッタリでした!

しかもこの映画、なんと実際にエベレストで撮影がなされ、主役の2人は本当に登山スキルを磨いたと言います。まるで、本当にこれからエベレスト登頂を目指すかのように

そして劇場で流れた映像は、まさに私の頭の中の想像をそっくりそのまま具現化したかのような、自分の頭の中を覗いているような感覚でした。

物語としては決して明るいものではなく、どちらかというと暗い部類に入ると思いますが、暗い部分をエベレストの壮大な景色とキャストの名演技でバランスをとっているかのような映画です。

もしあなたが登山に興味を持っていなかったとしても、楽しめる映画であることは間違いありません。

残念ながら、映画館で上映される時期はとっくに終わっていますが、レンタルDVDでご覧いただくことを強くオススメします!

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